翻訳ビジネス書専門書評家の読書感想文

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なぜ人は運を実力と勘違いするのか「まぐれ」

本書は「まぐれ」という潔いタイトルが示すとおり、人がなぜ運を実力と勘違いするか書かれた本です。

 

主に投資家を対象として書いてありますが、本書の知識はあらゆるひとに役立つでしょう。

 

世の中に確実なことなどなにもない、ということがわかる一冊です。

 

 

 

1 失敗のダメージが大きければ成功確率の高さに意味はない

本書で一番なるほど!!と思ったのはこのことです。

 

たとえばロシアンルーレット。

 

弾丸が1発だけ入っており、のこり5つは空のピストルがあります。

 

引き金を引いて空砲であれば、あなたは100万円をもらえますが、弾丸にあたってしまえばもちろん死んでしまいます。

 

あなたはこのロシアンルーレットをやろうと思うでしょうか?

 

ほとんどの人は、やらないと思います。

 

6分の1しか当たる可能性がないとしても、死んでしまえばなにもかもがおわりだからです。

 

確率論でいえば、6分の5という高い割合で100万円を手にすることができます。

 

ですから、このロシアンルーレットをやってみることは魅力があります。

 

しかし、死ぬという結果が重大すぎるため、やる人はいません。

 

死という重い結果と比較すると、100万円を手にする確率が相当に高い、ということは全く意味がないのです。

 

多くの投資家は、これを理解せず高い確率で勝てるオプション取引に手を染めます。

 

しかし、いざ低い確率にあたってしまうと全てを失ってしまうのです。

 

2 人は感情が永続的に続くものであると考える

人は将来何かを手に入れたときの喜びは、永遠につづくものだと考えます。

 

たとえば新築のマイホームを買った時、その喜びは永遠につづくと感じます。

 

しかし実際にはすぐになれてしまい、家があることが当たり前に感じます。

 

逆にいえば苦しい感情も長く続くと感じます。

 

たとえば新しい職場で大変な思いをした初日の気持ち。

 

今後ずっとこんな苦しい毎日が続くのかと思ってしまいますが、実際にはすぐになれてしまうものです。

 

このことを知れば、必要以上に落胆することがなくなるでしょう。

 

喜びも苦しみも長くはつづかないのです。

 

3 白い白鳥を何羽見ようと白鳥は白いと断定できない

私達は、多くの共通する事象を経験すると、その事象に例外はないと判断してしまいます。

 

しかし、白い白鳥を何万羽見たとしても、「全ての白鳥は白い」ことを証明することはできません。

 

そのことを知っていないと「まさか」の時が来た時に回復できないダメージを受けることになるでしょう。

 

例えば地震などの天災がそうです。

 

過去100年噴火していない山が、明日噴火しないことを証明することはできません。

 

 

4 まとめ

本書は、当然のように認識していた我々の常識を改めて見なおさせてくれる一冊です。

 

投資をする人にはもちろん、頭が固い人にオススメです。

 

 

翻訳ビジネス書って本当におもしろいですね〜

 

オススメ度★5つ満点中

★★★

読みやすさ★5つ満点中

印象にのこったフレーズ要約

「ロシアンルーレットのような戦略を実行すると数年ごとに破産する」

「ある投資家が過去に利益を出したという情報はそれ自体では意味もないし関係もない。知る必要があるのは母集団がどれだけの大きさであったかである」

ジョージ・ソロスは過去の言動にとらわれない」

 

 

  実践したい3つのポイント

  1. 自分が過去にした決断に引きずられていることがないか考える
  2. 成功する確率が高いが失敗したら失うものが大きいことはないか考える
  3. 長く続くと考えていたことが実際にはすぐに終わってしまった経験がないか確認する